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【書評】『最高の体調』(鈴木祐) 執筆:祝田 良則

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お薦めの本の紹介です。
鈴木祐さんの『最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~』です。

鈴木祐(すずき・ゆう)さんは、サイエンスライターです。
心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介するブログ『パレオな男』は、100万PV/月を超える人気となっています。

「文明病」が心と体を蝕んでいく

現代社会は、以前とは比較にならないほど、文明が発達して便利になりました。
にもかかわらず、多くの日本人が幸福からほど遠い場所にいるのは、なぜでしょうか。

慢性的な体調不良や疲れ、生活の不安を抱えながら生きている。

そんな私たちの抱える問題の大半は、現代人に特有の「文明病」が原因です。

文明病とは、近代社会の変化によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状を意味します。
もっとも典型的な例は「肥満」です。

 進化医学から見ると、「肥満」は次のような解釈になります。
第一に、古代の環境には食料の保存や流通のシステムがないため、カロリーはもっとも貴重な資源です。そのなかで進化した人類は、自然と高カロリーな食事を好むように脳を作り変えてきました。
肥満研究の第一人者であるブルース・キング教授は、2013年のレビュー論文にこう記しています。
「人間の消化器系・感覚(味覚と嗅覚)・脳の食欲中枢は、およそ200万年前に発達した。これらの機能は、古代の狩猟採集民たちが暮らした環境に適応している。ほとんどカロリーが低い食品しかなく、食事にありつけないことも多かった時代だ。そのため、私たちの脳の報酬系は、できるだけカロリーの高い食べ物を探すように進化した。ところが、現代の先進国に住む人間は、食料の豊富な『肥満環境』に生きている」
人類に備わった生存システムが現代の豊かな環境ではうまく働かず、古代ではあり得なかった「肥満」という現象が現れた、というわけです。この人類の進化と現代のミスマッチが進化医学の根幹になります

残念ながら、この知見から「肥満」の明確な解決策が生まれるわけではありません。
しかし、もともとヒトはハイカロリーな食事を好むように設計された生物なのですから、少なくとも意志の力だけで「肥満」に立ち向かうのが時間のムダだということはハッキリするでしょう。「肥満環境」をどのように変えるかは各自の判断によりますが、正しい方向を目指すコンパスにはなるはずです。

『最高の体調』 第1章 より 鈴木祐:著 クロスメディア・パブリッシング:刊

私たちを悩ませる「文明病」の問題解決へのステップはシンプルです。

 ①自分が抱える問題について、どこに遺伝子のミスマッチがあるのかを特定する
②ミスマッチを起こしている環境を、遺伝に沿うように修正する

鈴木さんは、この2段階を着実にこなせば、ほとんどの問題は解決すると述べています。

本書は、脳と体を原始の状態にリセットすることで、本来のパフォーマンスを取り戻すための方法についてまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

「炎症」が長引くと、全身の機能が低下する!

鈴木さんは、健康的に年を取るには『炎症対策』がもっとも大事であると述べ、以下のように説明しています。

 あなたが転んでヒザを擦りむいたとしましょう。すると、その直後からケガをした部分にジクジクと液体が染み出し、軽い痛みとともに皮膚は赤く腫れ上がっていきます。これが「炎症」です。
炎症反応とは、体がなんらかのダメージを受けたときに起こります。有害な刺激を取り除こうと免疫システムが起動し、ケガを修復すべく働き出すわけです。炎症そのものは進化の過程で人体に備わった防御システムであり、私たちが生きていくためには絶対に欠かせません。
大事なのは、炎症が体の表面だけに起きる現象ではない点です。
たとえば、関節炎はヒザやヒジの炎症で痛みが起きた状態ですし、アレルギーの場合は、外から入ってきた異物に免疫システムが過剰に反応し、目の充血や鼻づまりといった炎症反応が起きた状態です。どんな場合でも炎症は発生します。
炎症によるパフォーマンス低下の例として、もっとも身近なのは「風邪」でしょう。免疫システムがウイルスと戦い続け、その結果として体には発熱や鼻水などの諸症状が起き、熱のせいで脳が正しく機能しません。誰にとってもおなじみの現象です。

ところが、現代人のパフォーマンス低下は、もっとわかりにくい形で起こります。風邪のように高熱で一気にかたをつけるのではなく、とろ火でジワジワと全身を煮込むような形で進行するのです。
切り傷や火傷といった短期の症状なら問題はありませんが、長期の感染やアレルギーのように炎症が長引くと、一気に話は変わっていきます。
人体を守るために免疫システムが激しい戦いをくり広げるせいで、血管や細胞といった周辺組織にまでダメージがおよび、やがて全身の機能が下がっていくからです。戦争が長びいたせいで水道管や電線が破壊され、やがて国力が下がっていくのに似ています。

ここで「内臓脂肪」について考えてみます。肝臓や腸といった臓器のまわりにこびりつく体脂肪のことです。
人体にとって、内臓脂肪は「異物」でしかありません。そのため私たちの体は、内臓脂肪が増えると免疫システムを動かしはじめ、脂肪細胞が分泌する炎症性物質が臓器に炎症を引き起こします。
しかし、いくら免疫システムが頑張っても、内臓脂肪ばかりはどうにもなりません。体脂肪を落とすには、食事や運動でカロリーを減らすしかないからです。
内臓脂肪が減らない限り体はジワジワと燃え続け、炎症性物質で傷ついた血管や細胞が動脈硬化や脳梗塞の引き金になります。これが、「メタボリックシンドローム」の炎症プロセスです。
このタイプの炎症には、ハッキリとした自覚症状がありません。風邪のようにわかりやすい症状が出ないため、「なんだか調子が悪い」や「よく寝たはずなのになぜか疲れている」といったレベルの、謎の体調不良として認識されるケースがほとんどです。そのせいで多くの人は不調の原因がわからないまま時間を過ごし、炎症の導火線は爆発へのカウントダウンを続けています。

『最高の体調』 第2章 より 鈴木祐:著 クロスメディア・パブリッシング:刊

鈴木さんは、謎の不調と炎症は、明確に連動していると述べています。

ケガや風邪など、はっきり症状として自覚できる炎症は、すぐに対処できます。

しかし、内臓脂肪に起因するような「自覚できない炎症」は、そのまま放置しがちです。

体調不良の陰には、必ず「炎症」がある。

見逃してしまいがちな真実といえますね。

「40分の昼寝」で完全回復!

「睡眠負債」という言葉があります。

これは、睡眠の量を借金にたとえた表現で、毎日の寝不足が少しずつ溜まっていくと、やがて債務超過に達して様々な疾患を引き起こすことを表します。

睡眠負債が続くと、脳と体が受けたダメージを修復する時間がなくなります。

鈴木さんは、処理されずに残った疲労やストレスは少しずつ体を破壊し、最終的には手のつけられない炎症に変わると指摘します。

 睡眠負債は知らぬ間にコツコツと積み上がっていくため、返済もコツコツと行うのが重要。そこで使えるのが、「昼寝」のテクニックです。
昼寝の研究が進み始めたのは1990年代で、たとえば104人の健康な男女を睡眠不足にさせた実験では、数分〜数時間の昼寝によって、注意力や論理思考などの大幅な改善が見られました。
以降も似たような追試が行われ、空軍パイロットを対象にしたNASAの研究でも、1回40分の昼寝でパフォーマンスが34%改善し、注意力は100%の完全回復を見せるなど、睡眠負債のダメージを防ぐ効果が広く確認されています。いまではグーグルやウーバーといった名だたる企業も昼寝を奨励しており、グーグルなどは「エナジーポッド」という専用の睡眠マシーンまで導入しているほどです。
実は、睡眠に問題がない狩猟採集民でも昼寝を行います。
カリフォルニア大学がボリビアのチマネ族の暮らしを3年にわたって記録した研究では、次の事実があきらかになりました。

  • 夏の時期は、年間の睡眠時間の22%を昼寝に使う
  • 冬の時期は、年間の睡眠時間の7%を昼寝に使う

狩猟採集民の世界でも、昼寝で体力の回復を計るのは普通のようです。
現時点では昼寝の最適量まではわかっていませんが、多くのデータでは1回15〜30分ほどでリフレッシュ効果が得られています。狩猟採集民も1回15分の昼寝で済ますケースが多いため、まずはこのレベルから試してみてください。
最初のうちは「20分だけ眠るのは難しい」といった感想が出るかもしれませんが、心配はいりません。ある実験では、快適なイスに座りつつ目を閉じて15分休んだだけでも睡眠時と似たような脳波が現れ、記憶テストの結果も向上したとの結果が出ています。
昼寝が苦手な人でも、とりあえず10〜15分だけ目を閉じて何もしない時間を作ってみましょう。
近年では、昼寝のリフレッシュ効果を高める方法として、「コーヒーナップ」というテクニックも開発されています。やり方は簡単で、10〜15分の昼寝の直前に1杯のコーヒー飲むだけです。
コーヒーと昼寝の組み合わせは意外なように思えますが、その効果にはいくつかの実証研究があります。
具体的には、疲れ気味の被験者に15分のコーヒーナップを試した実験では、普通に昼寝をしたグループよりもドライブシミュレータの成績がアップ。日本で行われた研究でも、昼寝前に200mgのカフェイン錠を飲んだ学生は疲労感が減り、記憶力テストの成績も上がりました。
このような現象が起きるのは、カフェインが脳に達するまでに20分かかるからです。そのため、コーヒーを飲んでから20分後に目を覚ますと、昼寝のリフレッシュ作用にカフェインの刺激が組み合わされて相乗効果をもたらします。昼寝の効果を高めたい方は、試してみてください。

『最高の体調』 第5章 より 鈴木祐:著 クロスメディア・パブリッシング:刊

睡眠負債の怖いところは、自覚するのが難しいことです。
気づかない間に、心身をむしばみ、慢性的な不調の原因となります。

昼寝は、積み重なった睡眠負債の手軽な解消法です。
ぜひ、試してみたいですね。

☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

慢性的な不調の原因となる「炎症」を防ぐのに、もっとも手軽でメリットが多い方法。

それは「自然との接触を増やすこと」です。

鈴木さんは、ストレスが劇的に下がるのはもちろん、自然のなかにいれば大気にふくまれる細菌が腸内環境に良い影響をあたえ、自律神経が整うおかげで睡眠の質も高まり、同時にデジタル断食の効果も得られるとおっしゃっています。

文明を発達させるほど、体の不調が増えていく。
そんな逆説的にみえる現象も、よくよく考えれば、当たり前のことだと認識できます。

自然とともに生き、自然とともに死ぬ。

それが私たち人間が、幸せで健康的な人生を過ごすための秘訣です。

皆さんも、本書を片手に「最高の体調」を手に入れてみてはいかがでしょうか。

↓もっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
【書評】『最高の体調』(鈴木祐)

109 祝田 良則

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